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2012年5月 6日 (日)

エネルギー政策の破綻と責任の取り方

 日本で唯一稼働していた北海道電力泊原発3号機が、定期検査のため運転停止しました。これにより、日本国内にある商業用原子炉50基全てが運転を停止、この国で稼働している原子炉はなくなりました。原子力による発電量が0になるのは実に42年ぶりとか。
 「反原発」を叫ぶ人たちはデモとかやって大喜びです。今は気候が温暖ですから消費電力量は少なく、原子力での発電分がなくても火力を全力で回せば電力不足には陥らないですしね。「電力は足りているじゃないか!」「電力不足なんて嘘だ!大嘘だ!!」と。ええ、その通りですよ。今はね。
 しかし、日本にとって必要な電力(年間約1兆kwh)の3分の1を賄ってきた原子力発電分の電力が、これでまるまる消えてしまったわけです。それも、最も安定大出力の発電機が50基全部使えず放置されるわけですから、まぁ、普通に考えても大変なことだとわかりますよね(核燃料の安全性の観点からすれば、より危険となったとも考え得る)。なのに、原子力の代替となるエネルギー源は、福島第一原子力発電所事故発生から1年と2ヶ月もの間騒ぎ続けたというのに結局なにもありませんでしたし、当然電力会社以外の人間が代替電源を用意したりもしませんでした(非常用発電機の設置とかは除く)。現状は何とか各電力会社が火力発電で凌いでいるって状況のはずですが、政府もマスメディアもネットでも今なお連日電力会社を非難し続けています。その間も平気で電力を使い続け、私たちはひたすら文句だけ言い続けて、毎日暮らしています。
 そんな中、電力使用量がピークとなる暑い夏が、また今年もやってきます。
 この夏は、どうするんですか?また「節電」ですか。
 もちろん、原発に反対している人たちは何も言いません。あの人たちには「対応策」など頭の中にも一切ありませんから。大好きな「節電」だって、しているんだかどうなんだか怪しいもんです。
 この点、政府は今回、一応最も需給状況が逼迫する関西電力の大飯原発3号機4号機(※どちらも1990年代運転開始で、関西電力の原子炉の中では最新式。出力も最も大きい118万kW)の再稼働を必要と認め、手続を進めようとはしました。にも関わらず、担当大臣である枝野幸男経産大臣が政府方針に反する言動を繰り返しては撤回する(いつもの)民主党政権の自滅パターンで話をおかしくしてくれまして、結局再稼働に至らずに原子炉運転全停止と相成りました。国政の総責任者たる野田首相がどういう考えなのかは、はっきりとはわかりません。あやふやなまま今日を迎え、その上全原子炉停止という事態に対する政府の見解もよくわかりませんな。
 ただ、今回再稼働に至らなかった理由は、必ずしも(いつもの)民主党の失態だけではなかったりします。主たる原因は、電力が不足して困るはずの関西電力管内の自治体、私も住む関西の自治体の長たちが、こぞって大飯原発の再稼働に反対したことにあります。大飯原発の地元自治体の長・西川一誠福井県知事が明確に反対したというのならまだわかるのですが、そうではなく、“原発銀座”福井で発電した電力の最大消費地である橋下徹大阪市長が中心となって、松井一郎大阪府知事、山田啓二京都府知事、嘉田由紀子滋賀県知事らが「安全が確保されていないのに再稼働はおかしい」とそれぞれ国に要求を突きつけ、政府に自治体が楯突く形で再稼働手続を止めてしまったのです。
 私は原子力政策というものは国がその責任で独断にて決めるものと思っていました。実際、地元の意向など関係なく菅直人前首相は中部電力浜岡原発の停止を中部電力に「要請」(事実上の命令)したではありませんか。ならば再稼働だって地元の意向など無視し、少なくとも「要請」ならできると思っていたのですが……「原子炉稼働には地元の理解が必要」ということを理由に、今度は「地元」ですらない周辺自治体=大飯原発の電力を使わせてもらっているだけの側が再稼働に対して文句を言ったわけです。「そんな言い方するなら、動かすのやめるよ」ってスネる政府というのもあまりに情けないわけですが、見方を変えればそうやって原発再稼働という(できることならやりたくない)手続から国が逃げる口実を、市長や知事が与えてしまったのです。そして、電力消費地の代表が「原発の再稼働をさせない」と言ったのですから、それはすなわち「夏の電力は不足しても構わない」と言ったのです。事実、橋下市長は「計画停電もあり得ると腹を決めれば、 電力供給体制を変えられる」との考えを表明しています。
 これでは仕方ないですよね。電力が不足するのは承知で「再稼働させない」と言ったのですから、本当に不足したら停電するしか。枝野大臣は、早速、関西電力管内の計画停電の用意を進める方針を示しました。責任者による「責任転嫁」という名の逃げ口上なんですけど(言う人に言わせると、これは「恫喝」だそうです。「陰謀」「恫喝」……ごちゃごちゃ口だけ達者な“言うだけ番長”って好きですよね、こういう言葉が。「普段あんたらがしてることそのものだろ」と言い返してやりたいわ)、それも仕方ないといえば仕方ありません。情けない担当大臣サマに、そういうことを言う口実を与えたのは上記の住民代表サマたちなんですからね。
 そしたら、その住民代表の方は何と言ったか。大阪府市統合本部のエネルギー戦略会議で、橋下市長や松井知事が選任した特別参与らは関西電力に対し「大飯原発再稼働で電力不足は乗り切れると思っているのに、おかしい」(河合弘之特別参与)「(休止中の火力発電所の稼働について、安全上の問題があると難色を示したことに対し)企業努力が足りない、電力の安定供給責任を果たしているのか」(村上憲郎特別参与)と怒鳴ったそうです。
 たしかに、関西電力も今春の再稼働を念頭に置いてた割に「大飯原発に免震事務棟やフィルター付きベント装置を設置するのは3年後までに」とか言っちゃうわけで、明らかに準備不足な点はありますし(例の意味不明な“ストレステスト”実施のせいで、テスト中は施設に手をつけられなかった可能性もありますが。専門家ではないので現実はわかりません。私は、免震事務棟を建設、完成が不可能ならせめて建設着手くらいはしておくべきだったと考えます)、その点を批判するのはもっともです。
 しかし、関西電力には大飯原発に今回の3号機/4号機の他に1号機と2号機が、あと美浜に3つ/高浜に4つの原子炉があるのですが(合計出力976.8万kw)、そのうちの2つ(出力236万kw)動かしただけで「電力不足は乗り切れると思っている」とか、火力発電というのは常時稼働が難しいと新聞にも書いてあるし休眠火力発電所は整備でさえカネも時間もかかるのに今になって「企業努力が足りない」のなんのってね……そんな理不尽なクレームは素人でも思い付きませんよ。戦略を練る人間が「素人未満」って、それでも税金から給料もらえるなんて“パラダイス”ですね、大阪府市って。その上、安定供給を阻害してでも計画停電してでも再稼働手続を止めるというのが大阪府市代表の方針なのに、会議の特別参与ごときが「(電気事業法上の)電力の安定供給責任を果たしているのか」ですって?そんなこと言える立場?配下であればそれこそ職務命令違反ですし、府市と独立の立場であればその言葉は言う相手が違う。関電ではなく市長に「関電に安定供給責任を果たさせろ」と言うべきなのに、そうはしない。
 つまり、「夏の電力は不足しても構わない」と政府には言い放っておきながら、彼らは「電力が足りなくなるのは関西電力のせいだ」と言っているに過ぎません。さらに、エネルギー戦略会議の別メンバーである飯田哲也氏(この方はNHKの討論番組で何度かお見かけしました。自然エネルギー派の急先鋒ですよね。聞きましたよ、番組内での主張は全て)は、関西電力に対する不満を表明した上でこうも語っています。「停電を脅しに使って、仙石、枝野氏がいわば橋下さんにやくざの言い掛かりのように、(大飯再稼働を)やらなければ停電は橋下のせいだという世論誘導しようとしている」と……関西電力のみならず、停電は政府のせいだと。どっかの民間研究所所長サマが、政府要人を“やくざ”呼ばわりの上に、その人達に脅されて世論誘導されてるとまで言ってのけるとはね。ホントに偉いんでしょうね、この人。たぶん国内では内閣総理大臣よりも偉いんでしょうな。「責任転嫁」に「責任転嫁」で対抗する人間というのは、ひと味もふた味も違いますよ。自らの責任は全て棚に上げてそれで許されるのですから。
 これが、私たちの選んだ代表(とその配下)です。少なくとも大阪府と大阪市の長は、昨年秋に決めたばかり<こちらの記事参照>。彼らは「脱原発」を公約に掲げていました。それでも選んだ以上、選んだ住民には責任があります。
 ここまで言うんですもの。夏のピーク時に電力が足りなければ、関西は停電するのが当たり前ですよね。「再稼働反対」を支持し続けた住民は、文句を言わず、従ってもらうしかありません。
 言ってましたよね、市民は「原発がなくなるなら、多少不便な暮らしはガマンする」とか「経済よりも安全優先」とか何とか、偉そうなことをさんざん。そして、そういう主張を否定もしなかった。それどころか朝日新聞の調査では実に77%もの人が「計画停電もやむなし」とか。その気持ちを、実践するときがついにきたってことですよ。まさかとは思うのですが、そうヒステリックに言い続けてきたのに、ここにきて「電力会社には安定供給する義務がある!停電させない義務がある!」などと口走ったりしませんよね?原子力発電に反対、原子炉再稼働に反対なんですよね?そうですよね?なら、やりましょう、停電。
 もちろん、最も再稼働に否定的態度を明確にし、関西電力の筆頭株主として株主総会にて株主提案を出すとも言われている大阪市は、特に電気を使わないでいただきたいですな。当然でしょう、住民が直接選んだ人があれだけ頑張ったんですから。その責任は取っていただかないと。どうせなら、全面停電していただければ他の関西電力管内の職場や住民はだいぶ救われるんですけど、そこまで言うのも何ですので……そうですな、関西電力の原発依存率に合わせて50%減でいいですよ。早急な脱原発を望んでいるのですから電力供給量半減、それぐらいしてくれてもいいんじゃないですか。あと、京都市と神戸市も株主総会で提案するんでしたっけ?では、京都市内と神戸市内も率先して停電してくださいな。ああ、京都は府も原発再稼働反対でしたか。京都府民は滋賀県民といっしょにしっかり責任取ってくださいよ。あなたたち住民が選挙で選んで、リコールもせずに勝手なことを言わせ続けた結果なのですから。「責任を取る」って、そういうことでしょう。実行あるのみです。
 は?「生活が成り立たない」?「経済が成り立たない」?「暑さで死ぬかもしれない」?「病院はどうする、患者が本当に死ぬぞ」?そんなこと当然わかってて言ってたんでしょう、「原発再稼働反対」って。責任取りましょうよ。責任取れないなら、どうして「再稼働反対」って言ってる長たちに何も言わないんです?なぜ投票したんです?
 私も関西に住んでいるわけで、「より停電すべき」地域に大きく関わる生活ですし、関西の酷暑+停電となれば本当に命がないかもしれませんから(※ふざけているわけでも煽っているわけでもありません。今年の秋を迎えられない可能性は大いにあります。体は弱いし、上記の偉い人たちみたいにエアコンつけっぱなしではいられないはずですからね)、この際はっきり言わせてもらいますよ。原発に半分も発電を依存していながら、この1年ちょっと、大して準備もせずに文句だけ言い続けてたツケが私たちに回ってきたってことです。それでもなお再稼働反対して、電力足りないのに再稼働しないんでしょ?させたくないんでしょ?ならば電力を食う工場なんて動かなくて当然だし、オフィスビルだって巨大マンションだって止まって当然です。個別の日々の生活が回らなくなるのも当然、計画停電により生活の安全が脅かされたとしても当然の結果です。それが私たちの選択なのです。イヤなら再稼働するしかないのにそれをしない、火力増強分のコスト負担(電気料金上昇)もイヤなんでしょう?だったら、その結果を黙って受け入れるのも当然ではありませんか。国のせいでも関西電力のせいでもなく、自ら選択した私たちにもはや「停電回避」などと言う資格はないのです。先のエネルギー戦略会議で「死んでおわびするのか」と関西電力側に怒鳴った人がいたようですが(※関西電力はずっと外部を巻き込む事故を起こさず今も電気を供給し続けています。職員も経営陣も死ぬ必要など全くありませんよ?にもかかわらず、人の命に関わる暴言……これを「恫喝」といわずして何を「恫喝」というのでしょう)、仮に誰か死ぬとしたら上記のとっても偉い人たちではなく、私たち住民が先でしょう。でも、それも選んだ道、仕方ありません。さらに文句を言い重ねられる立場にありませんから。本当は、死ぬなら上記の無責任極まりない責任者たちが先だと思うんですけど……そうではないのが世の中ですよね。
 ま、ここに挙げた人たちの名前、私は忘れませんよ。後世に「原発を葬った賢人たち」と名を残すんですかね、彼らは。いいですな、無責任の極みの“文句たれ”が賢人ですか。時代は変わりましたね、本当に。

 私が大飯原発再稼働問題に直接関係する関西電力管内の住民のため、今回は関西地方についてのみ重点的に書きましたが、この話は日本全体に共通しています。
 原子力再稼働に反対するということは日本のエネルギー政策に反対することであり、それをし続けた結果国内の原子炉が全て止まったわけですから、今日をもって「日本の国としてのエネルギー政策は破綻した」と言っても過言ではないです。国としてなすべきをなさず対案もなく指針すらなくなったわけですから、「手遅れ」に一歩を踏み込んでしまいました。沖縄基地問題なんかと同じですね。また一時の感情にまかせて日本を壊してしまいましたよ。
 その責任は、もちろん「何も決められない民主党政権」にもありますが、身勝手な文句ばかりを言い続け、文句と決められない政治を許した主権者たる私たちにあります。
 電気の調達すらままならない日本などという愚かな国から大規模工場がなくなって失業者が溢れようとどうなろうと、私たちが選択したのです。今も聞こえるでしょう?反原発を叫ぶ人たちの歓喜の声が。「脱原発」のかけ声が。「放射能はいやだ」の声が。「東京電力は潰れろ」「電力会社は悪だ」の声が。
 そういう身勝手かつ無責任極まりない声がいつまで経ってもなくならず否定もしないのですから、私たち主権者たる国民は責任を取るべきです。この場合の責任の取り方とは、停電を受け入れその結果をも受け入れることですよ。そして、同じ国民から発せられた身勝手から来る痛みを、その身で直に感じるしかない。それがたとえ破滅を意味することであったとしても。

 それが「イヤだ」と思ったら「イヤだ」と言うのなら、ただの身勝手とは違う声を上げるしかありません。それも大きく。ただし、タダの文句に留まるようでは「反原発」と何も変わりません。
 この国の政治家はほぼ全員が「脱原発」で、「反原発」に屈しました。残念ながら全滅です(※補注:語弊がある表現ですが、「全員が社会主義者に屈した」という意味では決してありません。前にも書きましたが、今の政治家は自己保身しかしないために、自身が原子力発電というものをどう考えているかに関係なく「脱原発」という言葉に逃げ込んでいます。したがって、「原発再稼働を合理的に主張したとしても、“脱原発”に逃げる政治家にはもはや全く期待できない」という意味です。ただし、仮に再稼働容認の声が大勢を占めるようになったら、彼らは即座に寝返りますよ。自己保身のためにね)。
 ならば、私たち主権者が、自身で、より大きな声を、それも文句ではなく理を伴った主張を出し、実行に移すまでに至る……それしかないですよ。
 答えは必ずしもひとつではありません。これが残されたもうひとつの責任の取り方じゃないですかね。

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コメント

もう 代替エネルギーができるまで原発稼働すべきという容認論は悪者扱いされますね。 原発反対は売名行為に使われることもしばしば。
反対するには腹をくくらなきゃ。

投稿: エアウォーカー | 2012年5月14日 (月) 09時02分

エアウォーカーさん、はじめまして。
何を考え何を言うかは個人の自由ですが、発言した以上は責任を伴うと私は思っています。当ブログも軽い気持ちでは書いていません。
ましてや、責任ある公的立場の人間の発言は重く、その発言にはきちんと責任を取っていただかなければ税金を払っている意味すらなくなってしまいます。
世間的に原発再稼働に対する風当たりは強いようですし、事実原発に反対する立場の著名人ばかりが取り上げられたりもしてきましたが、それならばそういう発言をしている人には是が非でも責任を取っていただきたいと思います。
仰るとおり、腹をくくって対処すべきです。私の住む関西地域は、特に。他地域に迷惑かけるようなことも、責任を曖昧にしないためにできればしないでもらいたいと私は考えています。

投稿: ブルーメール | 2012年5月14日 (月) 23時03分

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