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2011年5月 1日 (日)

二流国家になりたいのですか

 この国の首相は原子力政策を白紙にすると言い、原発のある自治体の首長の半数近くが定期点検中の原子炉の再稼働に慎重な姿勢であると報じられていますね。
 たしかに、福島第一原子力発電所であれだけの事故が発生し、現在もなお収束しない現状を見れば、そう言わざるを得ないというのもわかります。「新規原子炉建設にすぐさま着工せよ」とは、「原発維持」が持論の私もさすがに言いにくいですし。
 しかし、このまま原子力発電を再稼働することすらしないのなら、電力の供給が不安定になりいずれ足りなくなる、いや、この夏を乗り切れないのは明らかです。代替エネルギーを火力にするにしたって、今年の夏に間に合わせようとすれば東京電力のようにありとあらゆる手を尽くさなければ間に合いません(東電の事故対応のお粗末さは批判されてしかるべきだけど、代替発電能力確保に関してはもっと評価されるべき。大企業だけあって、政府のようにひたうら無能無策ではないですよ、彼らは)。にもかかわらず、他の電力会社がそうまでしているとはとても思えません(「計画停電になるけど、それでいい?」とか言ってる時点で危機感がないのは明らか)。
 「だからこそ、クリーンな自然エネルギーに転換すればいいんだ」と仰っている人が政治家にもネットにも多数おられます。ですが、現時点では夢物語です。仮に、現時点では最も作りやすそうな風車をじゃんじゃん作るとしましょう。それで、電力の安定供給なんてできると本当に思うのですか?ちょっと風が強ければ回せない、最も強大な風力を伴う台風が来れば回せないどころか折れる。そんなものが日本の気候に適していますか?そもそも発電量が圧倒的に足りないことを、どう考えているのやら。それを補うだけの数の風車を作る時間、コストは?立地すらない現実は……「太陽光など他の自然エネルギーも合わせれば大丈夫」ですか?そういうのをウソの上塗りと言うんです。絶対的に発電量が足りないことに対して何の答えにもなっていない。「本当にそうするにはどうすればいいのか」と真剣に考えていないくせに、具体性のない夢にすがりつく。そんなことでは、都合良く民衆を騙したい人たち(票のためとか、投機資金回収のためとか、いろいろありますわな)に騙され続けるだけですよ。
 我々の生活は、電力によって成り立っています。それは、冷蔵庫やエアコンなどの電化製品による「便利な日常生活」を成り立たせているというだけではありません。この国は“技術立国”であり、工場を大電力で動かし、その“上がり”を元手にして経済を廻し、収入を得ているのです(もちろん、「工業だけ」ではない。が、工業抜きでは成り立たないほどに依存していますよ、日本経済は)。その観点が政治や一部のネット世論から抜け落ちているとしか思えませんな、私には。

 国の今後の基本方針として「自然エネルギーに転換」するならば、それはそれで構いませんよ。でも、そんなのは新技術を確立して5年10年経って初めて成し遂げられることです。そう変わるまでの間、商売相手の「世界」は待ってはくれません。世界の最先端を誇る日本の工場も、今年の夏に安定稼働できないとなれば、他の国の工場で代替されていくだけです。日本がもたもたしている間に、原子力発電で得た電力を元にした中国や韓国の工場に仕事を奪われていく、それだけのことですよ。そして、日本は「世界」から取り残される……その間に失ったものを取り返すのは、並大抵のことじゃありません。見通しすらないのに現実から目を背け続けるなんてのは、それこそが「無責任」ではないのか。
 今この時点ですべきことは何なのか、冷静に考えるべきです。政治家だけでなく、主権者たる我々国民も。現実を見定め、現実的な対応を積み重ねるしか被災地復旧への道はないし、その先にある日本全体の復興もないんですよ。

 キレイごとだけ言って、電力の安定供給を放棄するのがこの国の政治であり、民意であるというなら、それもいいでしょう。
 だけど、覚悟しておかなければなりませんよ。そういう選択は、日本が経済的に二流の国家となり、失業者が溢れる社会になるリスクを孕んでいることも。
 みんなで失業しますかね。ま、それも1つの責任の取り方ですわな。

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